2023-10-05
BPaaS
バックオフィス最適化
クラウドサービス活用
No items found.

BPaaSとは BPOとの違いとは

現代のビジネス環境では、業務効率化自動化によるDX推進が求められています。本記事では、新たなソリューションとして注目される「BPaaS(Business Process as a Service)」について解説します。BPaaSの定義からBPOとの違い、具体的な事例や導入メリット、特徴、セキュリティ対策まで、幅広く紹介します。

【目次】

BPaaSとは

BPaaSとは、クラウド上で提供されるビジネスプロセスサービスのことです。
企業の特定業務プロセス全体を外部にアウトソーシングし、クラウド経由で成果を受け取るサービスモデルです。


言い換えると、SaaS(クラウドソフト)の提供に加えて、BPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の要素と業務自動化技術を融合させた形態であり、
BPOの進化版とも位置付けられます。

  • BPaaSの主な要素
    • 業務プロセス(Process):標準化された業務フローをサービスとして提供
    • プラットフォーム(Platform):クラウド上の共通SaaS基盤で業務を実行
    • パフォーマンス管理(Performance Management):SLAやKPIでサービス品質を管理
    • API連携:外部システムと接続しやすく、既存システムとの統合や拡張が柔軟

BPaaS提供企業とクライアント企業が共通のクラウドSaaSを利用し、提供企業側の専門スタッフがそのクラウド上のデータに直接アクセスして業務を遂行します。
クライアント企業は自社でデータを加工・転送する手間がなく、業務進捗もリアルタイムにクラウド上で確認可能です。
必要に応じて他のクラウドサービスともAPIで連携し、機能拡張や周辺業務とのシームレスな統合もできます。
SaaSの利便性とBPOの省力効果、さらにRPAやAIによる自動処理を組み合わせることで、従来より迅速かつ効率的な業務運用が実現します。

BPaaSとBPOとの違い

  • BPO(Business Process Outsourcing)
    自社の業務プロセスの一部を第三者(外部業者)に委託するアウトソーシング形態です。伝統的なBPOでは、委託先ごとに異なるシステムや手順で業務を処理することが多く、場合によってはお互い社内設置型のサーバー運用環境でメールやファイル転送によりデータの受け渡しを行います。
    その際、データ形式の変換や加工が必要になり、進捗も逐次報告を受けなければ見えづらいという課題がありました。

  • BPaaS
    BPaaS(ビジネス・プロセス・アズ・ア・サービス)は、従来の業務アウトソーシングとは異なり、企業と業務処理の仕組み自体がクラウド上で統合されているという点に大きな特徴があります。
    特に重要なのは、共通のクラウド基盤(SaaS)を企業側と運用側が共有する点です。この仕組みにより、業務に必要なデータはクラウド上に常に保管・更新されており、特定の関係者だけでなく、関係部門すべてがリアルタイムで同じ情報にアクセスできます。
    従来のBPOでは、処理を依頼するたびにデータを準備し、加工して送信し、結果を待つという時間的・手間的コストが発生していました。BPaaSではこのようなデータの個別準備や転送が不要になり、日々の業務がシームレスかつ効率的に進みます。
    さらに、データの流れや業務プロセスがすべてクラウド上に記録されるため、業務の進捗状況や履歴をリアルタイムで可視化・トレースすることが可能です。これは、業務品質の向上やコンプライアンス対応、内部統制の強化にもつながります。
    このように、BPaaSは単に業務を外部化するための手段ではなく、業務の標準化・効率化・可視化を同時に実現できる新しい運用モデルです。
    自社のリソースが限られている場合でも、クラウドを通じてスムーズに業務を遂行できることから、特に中堅・中小企業におけるDX(デジタル変革)推進の一手として注目を集めています。

BPOBPaaS、および関連するSaaSとの違い

項目 BPO(業務外注) BPaaS(クラウド業務サービス) SaaS(クラウドソフト)
システム環境
  • 委託元と委託先で別々のシステム。
  • 場合によっては社内設置型のサーバー運用環境で対応。
  • 委託元と委託先が共通のクラウドSaaSを使用。
  • クラウド上のソフトを利用(自社内で操作)。
  • インストール不要。
データ連携
  • メールやファイル転送が中心。
  • 外部委託先の要求に合わせデータ加工が必要。
  • データはクラウド上で共有。
  • 加工・転送なしにリアルタイム連携が可能。
  • データはクラウドDBに保存。
  • 外部委託先への共有は原則なし(自社利用)。
業務遂行者
  • 外部委託先の人が中心(専門スタッフによる手作業)。
  • 外部委託先の人+自動化技術。
  • 人の専門知見とRPA/AI等で効率化。
  • 自社の社員がソフトを操作。
  • プロセス自体の遂行は自社内。
特徴
  • 人手による代行で自社負担軽減。
  • DX効果は限定的。
  • 業務アウトソースとDX推進を同時に実現。
  • スケーラブルで効率的。
  • 最新ITツールを活用し業務効率化を図るが、運用は自社で行う。
  • アウトソース要素は無い。

上記のように、SaaSはあくまでクラウド上のソフト提供であり業務プロセス自体は企業内で行います。一方、BPOはプロセス自体をアウトソースしますがデジタル基盤の統一性は低いです。BPaaSはクラウド基盤上でプロセスごと委託するため、業務とITが一体化したサービスとして高い効率性と可視性を持っています。

BPaaSの事例

  • HRBPaaS(人事・労務領域)
    HRBPaaSは、人事・労務業務をクラウドで提供しアウトソースするサービスです。
    従業員情報管理、給与計算、社会保険手続き、勤怠・福利厚生管理など、従来人事部門が担っていた煩雑なバックオフィス業務を包括的にカバーします。

企業 具体例
Zenefits(米国) 中小企業向けのクラウド型人事プラットフォームです。従業員オンボーディングから給与計算、福利厚生、コンプライアンス管理までを一つのシステムで提供し、自社で人事部門を持てない企業でも簡単に人事業務を運用できます。ZenefitsのプラットフォームはHR、ペイロール、福利厚生、パフォーマンス管理アプリに加え、社労士のようなアドバイザリーサービスも組み合わせており、人事管理の包括的な体験を実現しています。これにより紙の書類作業を削減し、企業が本来の事業成長に集中できる環境を作り出しています。
SmartHR(日本) 入社・退社手続きのオンライン完結を特徴とし、従業員情報の登録から雇用契約書の締結、社会保険・雇用保険の電子申請まで3ステップ程度で完了します。総務省のe-Gov APIと連携して行政手続きのデータを直接オンライン提出できるため、社会保険の各種届出にかかる工数を大幅に削減します。加えて、社労士事務所など専門家との連携機能も備えており、必要に応じアウトソーサーによるサポートも受けられる体制です(社労士法人と連携し労務アウトソーシングを行うサービスも存在)。

  • 業界特化型BPaaS
    特定の業界に絞って業務プロセス全体をサービス化したBPaaSも登場しています。
    業界固有の専門性や規制対応が求められる分野で、クラウドと専門人材を組み合わせて提供するケースです。

業界 具体例
金融 米国のnCinoは銀行向けのクラウド型統合プラットフォームです。融資申請から審査、契約、ローン管理までの銀行業務プロセスをSalesforce上に構築されたSaaSで提供し、銀行の内部プロセスを一気通貫でデジタル化します。既存システムとの連携や規制対応機能も備え、国内外で多くの金融機関が採用しています(日本でも地方銀行が融資業務基盤にnCinoを導入)。
このようなクラウド基盤を通じて、銀行は融資処理の迅速化やコンプライアンス強化、運用コスト削減を実現しています。
保険 Guidewireは保険業界向けのBPaaS的サービスを提供する米国企業です。損害保険会社向けの契約(ポリシー)管理、保険金請求(クレーム)管理、請求書管理などの基幹業務システムをクラウドで提供し、保険会社のデジタル化を支援しています。Guidewireのプラットフォームは世界中の保険会社に導入されており、日本でも東京海上ホールディングスが採用するなど、保険コア業務のクラウドサービス化をリードしています。専門知識を要する保険金支払査定プロセスなどもルールエンジンで効率化され、業務の標準化・迅速化に貢献しています。
製造 ERP大手SAPが提供するSAP Digital Manufacturing Cloudは、製造業の工場オペレーションを支えるクラウドサービスです。クラウド型のMES(Manufacturing Execution System)として、生産ラインから収集したリアルタイムデータ分析による稼働状況の可視化、品質管理やトレーサビリティの向上、さらには労働者の安全管理まで包括的に支援します。このサービスにより、グローバル製造企業は各拠点の生産を一元管理し、生産計画の最適化やダウンタイム削減を図っています。
物流 米国発のFlexportはデジタルフォワーダー(貨物取扱業者)として、国際物流プロセスをオンライン化したBPaaSと言えます。Flexportのクラウドプラットフォームは、サプライチェーン上の荷主・フォワーダー・通関業者など関係者のシステムを一元連携し、貿易書類の自動作成や通関手続きのデジタル化を実現しました。これにより顧客企業は貨物の発送から通関、配送まで全過程をオンラインで追跡管理でき、物流のリードタイム短縮と可視化が飛躍的に向上しました。また必要に応じて人間のロジスティクスコーディネーターが介在し、AIでは対処しきれない調整業務もサポートします。

BPaaS導入のメリットと特徴

BPaaSを導入することでのメリットと特徴をまとめます。

▼メリット

  • コスト効率の向上
    BPaaSは基本的に従量課金制(使った分だけ課金)を採用するサービスが多く、ピーク時以外は余剰リソースに支払う無駄がありません。自社で新たなシステムを開発・運用する場合に比べ、初期投資や保守費用を大幅に抑えられます。またBPOを利用したり内製で対応したりするケースと比べても、少ない人員で業務を委託できるためコスト削減につながります。
  • スケーラビリティ(柔軟な拡張性)
    BPaaSはクラウドサービスのため、必要に応じて利用規模を簡単にスケールアップ/ダウンできます。例えば事業の繁忙期には迅速に処理能力やサービス利用量を増やし、閑散期には絞ることで無駄を省けます。従来、人手ベースのBPOでは急な業務量変動に対応しにくい面がありましたが、BPaaSではテクノロジー活用によりリソース調整が機動的です。

▼特徴

  • 高度な自動化と業務効率化
    BPaaSではAIやRPA等のデジタル技術が駆使されており、従来は人手に頼っていた作業もソフトウェアロボットが担います。
    例えば、AIの自然言語処理を用いたチャットボットが社内問い合わせ対応を24時間行ったり、RPAが請求書データ入力や定型帳票作成を自動処理したりします。
    これによりヒューマンエラーの削減処理スピードの飛躍的向上が実現します。
  • カスタマイズ性と柔軟な連携
    BPaaSはクラウドサービスでありながら、各社の業務ニーズに合わせたカスタマイズにも対応可能です。APIを通じて他システムと連携できるため、自社で使い慣れた既存システムや他のSaaSとシームレスに統合できます。

セキュリティとBPaaS

業務データをクラウドに預け外部委託するBPaaSでは、セキュリティ対策が極めて重要です。データ保護と規制遵守の観点から、以下の点に留意する必要があります。

  1. データ保護・アクセス管理
    信頼できるBPaaS提供企業は、クラウド上のデータに対し高度な暗号化認証制御を実施しています。例えば、大手クラウドHRサービス等では、多要素認証(MFA)やロールベースアクセス制御(RBAC)を導入し、データ通信もエンドツーエンド暗号化することで不正アクセスを防止しています。さらにシングルサインオン(SSO)や監査ログによる継続的なコンプライアンス監視も行われています。BPaaS利用企業側も、自社のセキュリティポリシーに照らして委託先の対策が十分か確認することが不可欠です。
  2. 規制遵守・認証取得
    信頼性の高いBPaaS事業者は、国際的なセキュリティ認証や業界標準に準拠しています。例えばISO/IEC 27001(ISMS)認証やSOC2 Type II報告書を取得し、情報セキュリティマネジメントや内部統制を第三者評価で証明しているケースが多いです。Workday社もSOC 1/SOC 2監査を毎年受け、物理・環境面も含めた管理策の有効性を検証しています。また欧州GDPRや日本の個人情報保護法といった法規制への対応も重要で、データ保存地域の選択やプライバシー保護機能を提供するサービスを選ぶべきです。

BPaaS利用におけるセキュリティは「クラウドサービス側の対策」と「委託業務の運用上の対策」の両面で考える必要があります。サービス提供者任せにせず、自社でもアクセス権限の最小化やデータ暗号化の活用、契約上の守秘義務や責任分界の明確化など、万全の体制を敷いて信頼性の高いアウトソーシングを実現しましょう。

ZenStrategyでHR業務の効率化を実現しませんか?
HR BPaaSサービスの詳細については、お気軽にお問い合わせいただくか、資料をダウンロードしてご確認ください。
オンライン採用相談
関連記事
ZenStrategy
Modern HR BPaaS services for startups and growing businesses.
© 2025 ZenStrategy. All rights reserved.