なぜ今「EQ採用」が注目されるのか
SaaSは、完成したソフトウェア(アプリケーション)をインターネット経由で提供するサービスモデルです。
ユーザー企業は、自社でサーバーやソフトを用意する必要がなく、ウェブ上で必要な機能をすぐに利用できます。
例えば、メールやグループウェア、CRMなどの業務アプリケーションを自社でインストールする代わりに、提供企業のクラウド上で利用する形態です。
サービス提供者側でソフトの運用・保守やアップデートが行われるため、ユーザー側は常に最新の機能を使うことができます。
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「EQ採用」が注目されている理由は主に下記3つあります。
- メンタルヘルス不調や早期離職
若手社員の休職・離職は増加傾向にあり、「人が辞めるのは会社ではなく上司が原因」とも言われるように、感情面のミスマッチが人材流出を招くケースが少なくありません。世界的にも従業員エンゲージメントの低下と高い離職率が問題視されており、その原因は組織内の感情面のケア不足にあると指摘されています。こうした背景から、社員のストレス耐性や共感力を見極めて組織の安定化を図る「EQ採用」に注目が集まっています。
- Z世代(1990年代後半〜2000年代生まれ)の存在
Z世代は幼少期からデジタル環境に慣れ、多様性や共感を重視する傾向が強い世代です。彼らは他者との比較や自己評価に敏感で、自分の感情と向き合う機会も多いため、高いEQが自分らしく働き続けるための土台になるとも言われます。企業側もZ世代社員のモチベーションを高め、離職させないために、より共感力のあるマネジメントが求められるようになりました。
- 採用ブランディングや他社との差別化
人材獲得競争が激化する中、「うちは人間力やチームワークを重視しています」と発信できる採用プロセスそのものが企業の魅力になります。候補者に対しても「この会社は人を大切にしていそうだ」という印象を与えられるため、EQテストを取り入れることが企業文化のアピールや応募者体験の向上につながる側面もあります。
EQが高い人材が成果を出す理由
EQが高い人材は、ビジネスの現場で高いパフォーマンスを発揮しやすいことが様々な研究で示されています。
その理由を大きく3つに整理すると以下の通りです。
- 自己認識が高くストレス耐性が高い
自分の感情の変化に気づきコントロールできる人は、プレッシャーのかかる状況でも冷静さを保ちやすくなります。EQが高い人は怒りや不安を自律的に制御でき、困難に直面しても折れない強いメンタルを備えているため、長期的な目標達成に向け粘り強く取り組めます。
- 対人能力が優れチーム成果を上げられる
EQの高い人は共感力やコミュニケーション力が高く、良好な人間関係を築くのが得意です。自分と他人の感情の動きを把握しながら行動できるため、衝突が起きても感情的にならず円滑に調整できます。実際に「大きな業績を上げるリーダーほど卓越した対人関係能力(=EQ)を備えていた」という調査結果も報告されています。
- 意思決定や顧客対応に優れる
感情を適切に扱える人材は、判断力や対外対応力の面でも強みを発揮します。自身の思い込みや衝動に流されず冷静に意思決定できるため、リスク管理が上手く失敗が減ります。また相手の立場に立って考える力が高いため、顧客や取引先の真のニーズを汲み取った提案・交渉が可能です。
以上のように、EQが高い人材は個人としても組織としてもパフォーマンスを底上げしてくれます。
逆にどんなにIQや専門スキルが高くても、EQが著しく低いとチームを乱してしまい生産性を下げる恐れがあります。
ビジネス成功の鍵がIQだけで説明できない以上、これからの採用ではEQ面の評価が不可欠と言えるでしょう。
EQテストで測定できる領域とスコアの読み方
Qテストでは典型的に4つの領域(能力)が測定されます。ダニエル・ゴールマン氏のモデルでは以下の4領域が定義されています。
スコアの読み方と考え方
多くのEQテストでは、以上の4領域それぞれにスコアが算出され、併せて総合EQスコアが提示されます。スコアの読み方としては、テスト提供元が示す平均値や偏差値を基準に高低を判断します。一般的なEQテストでは満点を200点、平均を100点程度に設定しているケースが多く、100を基準にそれより高ければ「心の知能指数が高め」、低ければ「やや低め」といった目安になります。
例えば、60点程度しか取れなかった場合はかなり低い心の知能指数とされ、「感情コントロールが苦手」「自己中心的な言動が目立つ」などの傾向が示唆されます。この場合、まずは自己分析を通じてエゴを抑える訓練が必要だといったフィードバックが得られるでしょう。一方、150点を超えるようなスコアであれば非常に高いEQと評価され、「他人の心情を深く共感するスキルが備わっている」ことを意味します。平均100に対して150は相当突出した高さであり、対人面での強みが明確と言えます。
企業が採用に活用する際は、このスコアをそのまま合否判定の絶対基準にするより、職種や求める人物像に照らして相対的な判断材料にすることがポイントです。例えば営業職では「社会的認識(共感力)が平均以上」であることを重視する、一方で開発職では「自己管理(粘り強さ)が高め」であれば多少社交性が低くても許容する、といったように役割要件に応じたスコアの捉え方をします。スコアが極端に低い領域があれば面接で補完的に質問するなど、他の選考手法と組み合わせて総合評価するのが望ましい運用です。
EQテストの選定ステップ
実際に自社の採用プロセスへEQテストを導入するにあたっては、以下のようなステップで検討を進めるとスムーズです。
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- 目的・KPIの明確化
なぜEQテストを導入するのか」を明確にしましょう。
例えば「入社後の定着率を上げたい」「カスタマーサクセス職に向いている人材を見極めたい」など、解決したい課題や向上させたい指標(KPI)を整理します。 - 職種要件マッピング
目的・KPI設定の上でどの職種・ポジションにEQテストを適用するかを決め、各職種で重要となるEQの要素をマッピングします。現場マネージャーとも連携し、「営業職なら共感力とストレス耐性が特に重要」など共通認識を持つことが大切です。この段階で期待する効果(ターゲットとするスコア傾向や合格基準のイメージ)も仮設定しておくとよいでしょう。 - テスト提供ベンダーの選定
具体的なEQテストの提供サービスを比較・検討します。国内では例えばZenTest(ゼンテスト)のように採用支援プラットフォームにEQ診断を組み込んだサービスや、アドバンテッジリスクマネジメント社のアドバンテッジインサイト(EQとストレス耐性を測定できる適性検査)などがあります。それぞれテストの設問構成や測定モデル、結果レポートの形式、費用体系が異なるため、自社のニーズに合ったものを選びましょう。選定時には信頼性(エビデンスや導入実績)や受検のしやすさ(オンライン対応、多言語対応の有無)、結果の活用しやすさ(レポートのわかりやすさ、分析サービスの充実度)などをチェックポイントにすると効果的です。 - トライアル受験
候補となるEQテストが絞れたら、実際にトライアル受験を行いましょう。
自社の社員(できれば活躍社員や平均的な社員など複数名)に試験的に受けてもらい、レポート内容や診断精度を確認します。 - 費用対効果(ROI)の試算
例えば1人当たり○円の受検料に対し、離職率低下や採用ミスマッチ防止でどれほどコスト削減や生産性向上が見込めるかを概算します。海外の調査では、従業員の感情面への投資(EQ向上施策)はコスト削減と価値向上の両面で高いROIを生むことが証明されています。自社においても、「仮にEQテスト導入で離職者が○%減少すれば△円の損失防止」「高EQ人材の増加でチーム生産性が○%向上し△円の価値向上」など定量効果を試算すると、経営層への説得材料になるでしょう。
導入の流れ
以下のような流れで準備と運用を進めます
よくある質問と運用のコツ
Q1. テスト結果のスコアが低い応募者は不採用にすべき?
A.スコアが低いからといって即不合格と決めつけるのは危険です。EQは伸ばすことが可能な能力であり、一度の検査で低く出ても今後の努力次第で改善できます。むしろ「低い項目が何か」に注目し、その人の弱点とされる部分を面接で追加で確認するなど総合判断することが大切です。
Q2.候補者がEQテストの対策をしてきたら正確に測れないのでは?
A.昨今は「EQテスト攻略法」のような情報も出回っており、事前に問題パターンを勉強してくる応募者もいるかもしれません。ただ、EQテストは性格検査に近い側面もあるため、完全に“正解”を暗記して高得点を取るのは容易ではありません。多くの良質なテストには一貫性のない回答を検出する仕組みや、表面的な取繕い(ソーシャルディザイラビリティ)を見抜く尺度が組み込まれています。その上で不安な場合、面接での人柄評価と組み合わせて判断することでカバーできます。テスト結果だけでなく面接官の感じたコミュニケーション力なども総合し、もし「テストは高スコアだが実際の受け答えに違和感がある」といった場合は慎重に見極めるといった対応を取ると安全です。
Q3. グローバル採用や多言語環境でも活用できる?
A.活用可能です。グローバル人材を採用する場合でも、EQの重要性は共通です。実際、多文化チームでは互いのバックグラウンドの違いを理解し尊重する力(社会的認識や関係管理)がより一層求められるでしょう。多言語対応については、サービス提供各社によりますが英語版や中国語版など主要言語に対応したEQテストも存在します。運用上は、日本語が第一言語でない候補者には母国語版で受検させるのが望ましいです。その際、各言語間でスコアの意味合いが大きくずれないよう国際標準化されたテストを選ぶことがポイントです。
Q4. 継続活用して組織開発にどう繋げる?
A.採用時だけで終わらせず、継続的にEQを組織作りに活かすことをおすすめします。例えば社員の昇格時やフォロー研修のタイミングで再度EQテストを受けてもらい、成長度合いや課題の変化をチェックする方法があります。これにより個人の成長を可視化でき、適切な異動配置や研修計画の材料になります。また組織全体として定期的にEQサーベイ(社員全員のEQ測定)を実施し、部署ごとの強み・弱み傾向を分析する企業もあります。世界経済フォーラムでも2020年までに必要なビジネススキルの第6位に「EI(心の知能指数)」が挙げられたほどで、リーダー層研修にEQ向上プログラムを組み込むケースも増えています。
ZenX「ZenTest(ゼンテスト)」
ZenTestは、スタートアップ企業である株式会社ZenXが提供する次世代型のEQ活用プラットフォームです。当初は人材紹介会社のエージェント向けサービスとして開発され、現在は企業の人事担当者にも展開が始まっています。ZenTest最大の特徴は、AI(人工知能)技術とEQテストを組み合わせ、採用から配属・育成まで人材マッチングをトータル支援しようというコンセプトにあります。具体的には、候補者に独自のオンラインEQテストを受けてもらい、その膨大なEQデータ(数万件規模)を学習した生成AIが、候補者ごとのEQレーダーチャートと詳細な分析レポートをわずか数十秒で自動生成します。レポートには候補者の強み・弱みの解説、面談で深掘りすべきポイント、さらには過去の内定データとの比較に基づく「向いている業界・職種」のサジェストまで含まれます。いわば従来は人材コンサルタントの勘に頼っていたマッチングの部分を、データとAIで見える化・自動化したサービスです。